『世界に福音が広がる』
使徒言行録8:26~33
フィリポによる異邦人伝道に学びます。ステファノの殉教を契機にキリスト教徒への大迫害が起こり、使徒たちの他は、ユダヤとサマリア地方に散って行きました。迫害を主導するサウロは「家から家へと押し入って教会を荒らし、男女を問わず引き出して牢に送っていた」(8:3)のですから、致し方ありません。深刻な状況です。
しかし、散らされた人々は、「福音を告げ知らせながら巡り歩いた」(8:4)とあります。聖霊の力を思い知らされます。また、そのような迫害の危機の中、フィリポが先陣を切ってサマリアへの伝道に赴いています。これがどんなに大きな変化であるかは、「善きサマリア人の譬え」からいやという程に分かります。
フィリポの目覚ましい伝道を受けて、ペトロとヨハネが後陣としてサマリアに派遣されることになりました(かつて、弟子の筆頭といえば、ペトロとアンデレ、ヤコブとヨハネだったのですが)。
そして、フィリポは、主の天使により今度は「南のガザへ下る道を行け」と命じられます。北から南へ大変なことですが、「すぐに出かけて行った」フィリポは、期せずして、その道中、エチオピアの高官に伝道することになり、彼に洗礼を授け、福音は遙かな地平にまで広がっていくことになったのです。
フィリポは、ヨハネ福音書によれば、イエス様から一人個別に声を掛けられ従う者となり、彼がナタナエルをイエス様に引き合わせています。熱心なスタートですが、後は、「五千人の給食」(多くの人々への伝道に用いられる)の時も、「父なる神の御心による十字架の預言」においても、不信仰を露わにしています。
しかし、復活の主に出会い、聖霊を与えられ、自分たちがやらないとした給食係のステファノのイエス・キリストそのものの殉教を目の当たりにし、彼を葬ったフィリポは、心の底から神の愛に気づかされ、福音の何たるかを示され、異邦人伝道に向かう者とされたのです。
今日のエチオピア正教会の始まりは4世紀とされていますが、その初穂は使徒フィリポによる伝道であったと示されます。私たちは聖霊の炎によって精錬され、新たな福音伝道に仕える者となるのです。ハレルヤ!
中島 聡牧師