みことばの糧1278

『奇跡の真実』

使徒言行録19:11~20
 高校生に「あなたのアイデンティティとは何か」と問うと、多くは性別や国籍、親との関係、得意なことなどを挙げました。しかし、それらが失われたとき自分は自分でなくなるのかという問いには答えられず、アイデンティティの本質の難しさが示されました。使徒パウロも回心前はユダヤ人、ファリサイ派、ローマ市民、迫害者としての立場に自らを置いていましたが、キリストに出会った後は「神の子」「キリストの僕」として新しい自己を見出しました。彼にとって真のアイデンティティは血統や地位ではなく、キリストとの関係に根ざすものとなりました。
 パウロは第三次宣教旅行で繁栄する都市エフェソに三年滞在し、困難の中で伝道しました。ヨハネの洗礼しか知らない人々にキリストの名による洗礼を授け、会堂で拒絶されてもティラノの講堂で語り続けました。さらに黒魔術や偶像礼拝が盛んな街で福音を伝えました。スケワの息子たちはイエスの名を商売道具として悪用し、悪霊に敗北しました。彼らには神様との関わりがなく、真のアイデンティティを持たなかったのです。一方パウロは飢えや迫害に苦しみながらも「苦難は忍耐を、忍耐は練達を、練達は希望を生む」と語り、弱さを知ることで自由を得ました。彼の奇跡は自らの力ではなく神の愛と支えによるものでした。
 現代もフェイクニュースや情報過多により真実が揺らぎ、私たちは不安に陥ります。しかし、アイデンティティは恐怖や不安ではなく、神に属することに根ざします。キリストを救い主と信じるとき、古い自己から解放され、神の子として新しい命を受けます。神に愛されていることを知ることで初めて自分を認識できるのです。神との関係に根差し、キリストと共に生きることにあります。これこそが奇跡の真実であり、救いの道なのです。ハレルヤ!

田中尚美牧師