みことばの糧1279

『福音宣教の中間点』

使徒言行録28:23~31
 使徒言行録は聖霊行伝、また伝道行伝と呼ばれており、パウロは4回におよぶ伝道旅行によって地中海世界一帯に、そしてローマ帝国にまで福音を宣べ伝えました。
 なぜ、パウロはこれほどまでに伝道することができたのでしょうか。一つには、彼が「目覚ましい奇跡」を行うことができたからということもあるでしょう。「彼が身に着けていた手ぬぐいや前掛けを持って行って病人に当てると、病気は癒やされ、悪霊どもも出て行くほどであった」(19:12)とあります。十二年間も病に苦しんできた女性がイエス様の衣房に触れて癒された奇跡が思い起こされます(マタイ9:20)。
 しかし、使徒言行録、パウロによる福音宣教の締め括りは、どんな奇跡をおこしたかではなく、「説明を続けた」、「神に国について力強く証した」、「モーセの律法や預言者の書を引用して、イエスについて説得しようとした」とあります。そして、信じないで、立ち去ろうとする人たちに対して、奇跡を見せるのではなく、イザヤの預言を引用し、「この神の救いは異邦人に向けられました」と言ったとあります。
 そして、最後は「神の国を宣べ伝え、主イエス・キリストについて教え続けた」と使徒言行録は締め括られるのです。
 全能の神、主は奇跡をおこされます。しかし、福音伝道とは主の奇跡の力を信じつつも、私たちが聖書から神の国、神の救いを説き明かし続けることであると示されます。
 伝承では、パウロはローマの郊外、トレ・フォンターネで殉教したとあります。復活のキリストに出会った弟子たち、使徒たちも、伝道を完成させることはできませんでした。私たちの宣教もどんなに頑張っても中間地点です。伝道の完成は、キリストの再臨の日(「時が満ちるに及んで、救いの業が完成され、あらゆるものが、頭であるキリストのもとに一つにまとめられます。」エフェソ1:10より)と聖書に記されている通りです。しかし、私たちは今日も福音を宣べ伝えます。それが信仰、愛だからです。「私は今日はあなたのことは知りません」という愛はありません。無論、私たちは不完全な者ですが、主はそんな私たちを今日も愛してくださいます。永遠にです。だから私たちは今日も主の御救いを伝えることができるのです。ハレルヤ!

中島 聡牧師

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