『勝利を与える主』
出エジプト記14章5節~14節
主の召命を受け、モーセはイスラエルの民を奴隷から解放するためにファラオと対決します。当時最強のエジプト王に向かっていくモーセは80歳(出エ7:6)になっていました。モーセは王子として成人した頃に同胞を打つエジプト人を殺害してしまったので、ミディアンの地に逃れ、およそ60年が経過していたのです。その間、モーセはずっと羊飼いをしており、なんと、燃え続ける柴の奇跡を見つけた時も、羊の群を荒れ野の奥に追って行き「神の山ホレブ」にまで来たのでした。ヤコブも20年にわたる羊飼いによって練り上げられたと同様に、過酷な羊飼いを忠実に続けたモーセには屈強な心身の力が宿っていたと思われます。しかし、それでもモーセは神様の召命を固辞しました。いや、それだからこそかも知れません。
長い年月を真摯に生き、自分がその器ではないこと、そして贖罪の念も忘れていなかったと思われます。神様はそんなモーセを救国の士として選ばれたのです。
モーセは、粘り強くファラオとの交渉を続け、神様から与えられた力を遺憾なく発揮し、過越の災いをくぐり抜け、遂に解放に成功したかに見えましたが、労働力としての奴隷が惜しくなったファラオは「えり抜きの戦車六百をはじめ、エジプトの戦車すべてを動員し」、イスラエルの民を猛追したのです。背後から襲いかかろうとするエジプト軍を見て、民は恐れ慄き、モーセへの怒り、不信を露わにしました。
かつて良かれと思って同胞を助けた時と同じです。あの時、モーセはたった一人のイスラエル人に詰め寄られて、逃げ出すしかありませんでした。しかし、今、モーセは主と共にいます。詰め寄ってくる大群衆は壮年男子だけで60万人ですが、モーセは「恐れてはならない。落ち着いて、今日、あなたたちのために行われる主の救いを見なさい。…あなたたちは静かにしていなさい」と命じ、主の御言葉の通りに、杖を高く上げ、手を海に向かって差し伸べ、紅海を二つに分け、イスラエルの民を救い出したのでした。
私たちの人生には恐れおののくことがあります。長い忍耐の時もあります。しかし、与えられたその時を、祈りをもって生きるならば、主は必ず信仰の勝利を与えてくださいます。
そして、その勝利は多くの人の救いとなっていくのです。主の力を受け、主に仕えて参りましょう。ハレルヤ!
中島聡牧師